2013年4月23日火曜日

無数のGたちへ

私たちは「非正規、不安定、低収入」の仕事で働く者たちです。
毎日のように違う場所で、違う人たちと、違う仕事をさせられている。
ばらばらに働き、ばらばらに生きる人間たちです。

本当は「毎日」仕事なんてない。
どこに行っても名前も聞かれず、隣の人の顔も見ない。
自分が何をやっているのかさえ、よく分からない。
指示するのも似たような契約社員たち。
私たちをデジタルに雇い、使い棄てるのが実は誰なのか、まるで雲の上。
そんな労働に私たちは「汚染」されている。

友人のGさんは、私たちが生きるそんな境遇の「極点」にいる一人です。
彼は福島第1原子力発電所の放射線管理業務で働いていました。
通勤と待機を含め1日13時間も拘束されて、日給たった1万円。
月に手取り16万なんぼ。残業代は涙金。危険手当も払われず、帰省する金もない。
体の中に被ばく線量シーベルトだけが毎日毎日溜まっていく。
そして、いきなり解雇されました(詳細は以下)。

安達太良山の裾野で浴びたGさんの「放射能汚染」と、首都圏で働く私たちの
「労働汚染」は繋がっている、なにか恐ろしい径路で。
この直感から私たちは動き出しました。

それでも私たちは自分自身を「肯定」したい。
そして、無数のGさんとともにGさんを支えたい。
そうした具体的な「闘い」を創り出していきたいと考えています。
                   (ごぼう支援協議会)


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人間の尊厳をかけた闘い───福島第1原発収束作業員への支援を!

被ばく労働の実像
ごぼうさんは、福島第1原子力発電所の重要免震棟内で放射線管理業務に従事していた労働者です。
宿舎のあるいわき湯本からJビレッジまでは片道1時間~1時間半。Jビレッジで防護服に着替えて待機します。構内での作業8時間だけでなく、実質拘束時間は1日12時間以上で日給1万円、月給は手取り16万強。残業代はまともに支給されていません。ひと月の被ばく線量は2~3ミリシーベルト。さらに通勤で毎日15マイクロシーベルトの被ばくを強いられます

作業員は「使い棄てパーツ」か?
2012年10月5日、ある原子力企業の下請け会社は、社員であるごぼうさんに電話で解雇通告をしてきました。
これが事の起こりです。下請け会社の説明は「元請け会社(XX社)との契約が切れる10月末で福島営業所は閉鎖、従業員全員を解雇する」とのこと。寮住まいのごぼうさんは、解雇と同時に住むところを失う危機に直面しました。加入する「フリーター全般労働組合」(以下、組合)は、この下請会社に対して解雇撤回、未払賃金支払いと住居確保等を求めて、10月26日にいわき市内で交渉を持ちました。しかし11月末まで住まいを確保しただけで、会社は「元請け会社の契約解除に伴う福島第1撤退」を理由にあくまで「解雇は正当」と主張し続けています。組合は、会社が表明した「解雇を避ける努力をする」という約束を履行しないため、東京都労働委員会に不当労働行為救済の申し立てを行いました。

消える「危険手当」
福島第1での収束作業は体内への重い被バクを伴う危険な作業です。2012年11月、東京電力は国に対して通常の労務単価に「危険手当」を上乗せして発注していることがメディアで報じられました。
ごぼうさんが東電資材部に相談すると、担当者は割増料金契約を元請け会社と結んでいることを認める。ところが、直接雇用されていた下請け会社との団体交渉で会社側は「危険手当は元請け会社より支払われていない」と回答。一方、東電は「上乗せして元請け会社と契約している」と答えました。両者の主張がともに真実なら、本来作業員に直接渡さなければならない危険手当を不当に詐取しているのは元請け会社、ということになります。ごぼうさんの闘いは、被ばく労働に伴う「対価」を少なくとも「法定」の額でキッチリと支払わせる闘いでもあります。

■XX社による「偽装請負」
東京・中央区に本社がある原子力発電所保守管理の大手「XX社」は、いくつもの会社に仕事を発注している元請け会社であり、法律上ごぼうさんを指揮命令してはならない立場です。
日常的に直接業務指示を出していたXX社は「偽装請負」という違法行為を働いていたのです。指揮命令下で使用するなら、XX社は直接雇用する責任があります。組合は、ごぼうさんの直接雇用を申し入れる。しかしXX社は「直接の雇用契約がない」ことを理由に、団体交渉さえ拒否。やむなく東京本社へ申し入れ書を持参した組合員に対して、XX社は警備員の力によって妨害したのです。このような姿勢に対して、東京都労働委員会に不当労働行為救済を申し立て、現在係争中です。

現場責任者による暴力的支配
会社ごとの切り捨てに脅える下請け作業員たちは、元請会社XX社の現場責任者にモノをいうことができません。その威力の下でこの責任者は、下請けの人事や契約内容に介入し、クビをちらつかせるなど言葉による恫喝を日常的に行っています。作業員の中には、こうしたパワーハラスメントに耐え切れず「自発的に」退職させられ、より危険な作業部署へ懲罰的に配置された人もいます。重要免震棟で下請け作業員たちを大声で罵倒する現場責任者の姿は、全収束労働者たちの眼に見慣れた風物となっています。
これらの不法行為は、実は私たち非正規労働者が毎日のように経験していること。そのもっとも極端な形ではないでしょうか?
「無数のGたちへ」、私たちが呼びかけたいと思うその理由です。

責任を負うべきは誰か?
原発は、8次9次にもわたる「協力企業」という名の下請け会社を通して、作業員を「柔軟に」雇い、またクビにできる仕組みを維持することで、都市貧困層や原発立地地域住民など特定のマイノリティに重い被ばくを強制することで稼働してきました。事故後でもこの仕組みはまったく変わっていません。
今回の解雇によって、ごぼうさんと同じ下請け会社を通じて働いていた作業員は、日々の糧を突如として失った。雇用していた下請け会社、下請け会社を切った元請け会社、元請け会社を締め付ける東京電力。それを支えて原発を推進してきた経済産業省・文部科学省。そうした企業群から配当を受け取ってきた株主たちに、この責任を取らせなければなりません。彼らこそ被ばくを強いられて働く人たちの生活や生命に責任を持つべきです。
本当に問われるべき者たちを問いましょう。

Gたちによる、Gの支援を
福島第1原子力発電所の事故収束や、多くの人が望むところの「早期廃炉」を実行するには、これまで以上に膨大な数の被ばく労働者たちが必要とされるでしょう。「廃炉」や「事故収束作業」は、当然にも作業員たちの生活と生命をまもったうえで行われなくてはなりません。彼らが直面する危機はこの社会の危機に直結すると、私たちは考えています。
「無数のGたち」の力でごぼうさんがはじめた闘いを支え、勝利しましょう。

※発注元企業「東京電力」
→受注元請け企業  (東芝、日立、鹿島、東電工業など)
→1次下請け企業  (ティアス、ジェーティーピー、創伸など)
→8次9次の重層的下請構造