2013年5月10日金曜日

元請け企業の指揮命令

元請け企業は以上のような作業員の業務について、
指示は行なっていない、行ったとしても緊急時に例外的に行ったに過ぎない、と主張している。


だが、作業員は、出入管理業務全体、とりわけ第二工区、第三工区については元請け企業従業員である統括責任者からの、第一工区及び資材搬入・搬出については別の同社従業員からの指示・監督を受けて働いていた。
直勤務の時に作業員が所属していた班の担当は元請け企業の社員であったし、日勤の場合は第三工区に元請け企業の社員らが配属されて、作業員をはじめとする下請け企業の従業員に指示を与えていた。
出入り管理業務はシフト制で行われており、仕事の現場に下請会社の責任者は基本的に不在である。だから、下請け企業の従業員は、その場にいる元請け企業社員の指示・命令を受けることになっていた。
元請け企業社は、作業員に日々、恒常的に、逐一、直接指示・監督していた。これはミーティングの実施によっても明らかである。作業員は直勤務の際は、毎日ジェイヴィレッジ内と免震重要棟併設プレハブ内の2回、9月からは日勤の際にも、免震重要棟併設プレハブ内の1回、持ち場に着く前にかならず元請け企業社社員の指示を確認するためのミーティングに参加していた。
作業員が参加したジェイヴィレッジ内でのミーティングは、班のミーティングであった。そこには同じ班に属する下請け企業従業員に加えて元請け企業の社員が参加し、一日の流れを確認して、作業持ち場と先発・後発の確認、運転担当決めなどをしていた。
免震重要棟併設プレハブ内でのミーティングは、「××ノート」と作業員の間では呼ばれていた元請け企業からの指示・連絡ノートをもとにして行われる。そこには統括責任者ら元請け企業の現場責任者が出席していた。作業員をはじめとする下請け企業従業員は、そこで当日の作業の引き継ぎ、変更事項や注意、VIP来訪の有無や対応の仕方などを元請け企業から指示されていた。
元請け企業は作業員の業務を包括的かつ具体的に管理する権限を持ちつつ、作業員に指示・命令をしていた。
監督する立場の元請け企業社員がいる場合には、元請け企業社員の許可を得てからでなければ休憩時間に入ることもなかった。VIP用の黄色の靴をサイズごとに必要数だけ用意する業務があるのだが、不足したサイズの靴をどう用意すればいいのかについて元請け企業社員の指示を仰いだこともある。
だいたい、その日の作業は「××ノート」を確認しなければわからない。
ところがこれらの実態を無視して、元請け企業は危険性を伴う緊急の事態にのみ作業を指示しただけであると主張している。だが、そんな言い訳は成り立たない。元請け企業が「緊急の事態」と言っていることはフクイチでは日々繰り返されていることだ。元請け企業はタイベック着脱場所の床が水分で濡れている状態を緊急事態の例に挙げているが、現場ではそれは日常である。
放射性物質汚染やその拡大の危険性が伴う状態が日常的であったのに対して、当該現場で作業員が×社の班長と同じ持ち場で作業することは通常はなかった。
また、班の中で先発・後発に分かれて作業をするので、仮に×社の班長が班に所属していても、作業員は班長とかならずしも同じ持ち場を担当する訳ではない。したがって、床の水のふき取りなどの作業も、元請け企業社員の指示・命令の下に行っていたのである。
作業員が従事していた業務においては、安全確保が必要とされる事態が作業の常態であり、持ち場での下請会社責任者の不在も常態であった。したがって、元請け企業の社員が作業員をはじめとする下請け業者の従業員に対処作業を求め、作業態様につき言及するのも通常のことである。元請け企業は恒常的に、作業員の作業内容や態様を一方的に支配、決定するためになされた業務指示をしていたのである。







だから作業員は作業の進め方について分からないことや確認しなければならないことがあればかならず、元請け企業社員に質問をしていた。
汚染拡大防止や安全配慮の観点からの指示を確認するための質問はもちろん、元請け企業社員に聞くしかない。でもそれだけではなく、具体的な業務の指示そのものが、ミーティングだけでなくその都度、現場で元請け企業社員からなされていたのである。そのため作業の進め方や内容が不明確な場合、その場を監督する元請け企業社員に質問するのが当然のことだった。

これらはもちろん、汚染拡大防止や安全配慮とは無関係の具体的な業務指示の一例に過ぎない。

ミーティングの場に、下請会社の現場責任者が出席しているとは限らない。したがって、具体的な作業についての指示は、現場を監督する元請け企業の社員から受けることになっていた。元請け企業の関わりは補足的なものではないのである。
2012年4月以降、日勤勤務となってからも、第二工区の元請け企業社員らの指示を受け、わからないことがあれば元請け企業社員に質問をしながら作業に従事していた。したがって、元請け企業社作業員の作業内容を一方的に決定する立場にあり、そうしていたのだから、作業員に業務指示をしていたのである。


たとえば直勤務において作業員が所属していたD班は、2012年3月までは、元請け企業社員2名、×社と他の下請け会社の作業員7名で構成され、指揮命令は、元請け企業の2名の社員のいずれかからなされていた。


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